煙草をやめれば月々およそ5千円程度の出費が消える。年間6万円の節約である。おまけにたばこをやめたらなぜか10年以上苦しんできた皮膚病が改善した(因果関係は不明だが、医者からはいつも禁煙を申し渡されていた)。ボロボロの皮膚が少々滑らかになって、ついには銭湯に恐る恐る通うようになった(客の少ない早い午後だけだが)。まったく、老人の幸せとは身の回りの、小さな機会を見逃さないことである。
年を取ると言うことはこういうことか。いつの間にか、日常の当たり前が、何げなく失せてゆく。それを実感させられる。別に嘆くわけでもない。年相応と割り切れば何のこともない。
さて、このコラムも多分15年ほど書き連ねてきたがどうやら潮時であろう。最近は書いていてもさっぱり面白くない。かつては、ちょっとしたきっかけさえあれば筆が走った。
書き出しさえすればストリーが付いてきた。それが今、書き終えて読み直してみて「へたくそになったなぁ(もともと巧くはなかったろうが)」と毎回感じるばかりである。
2年ほど前から始めた俳句がささやかな救いになっている。奥の深いこの文芸は、定年後の持てあましていた時間を埋めてあまりある。
インターネットや、ボランティア先での俳句同人会など、締め切りに尻を叩かれながら投句をすれば時によってはほめられる。年寄りの、何よりの救いは人からほめられること、自分を認めてもらうことなのだ。
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